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コンピュータ、プログラミング、DTP(InDesign)に関する備忘録

InDesignの文字組アキ量と行頭における始め括弧類の組方

 InDesignの文字組みアキ量設定による段落1字下げ - なんでやねんDTPで解説されているものの二番煎じであるが、行頭の始め括弧類について今日は考えたい。
 今日々、多くの書籍は段落行頭を字下げする組版、それも本文一字分を下げる組版である。この段落行頭における字下げであるが、始め括弧類が行頭に来たときは少し注意が必要で、行頭における始め括弧類の組方として三通りにわけられる。

  1. 段落行頭:全角二分下げ/折返行頭:二分下げ
  2. 段落行頭:全角下げ/折返行頭:ベタ
  3. 段落行頭:二分下げ/折返行頭:ベタ

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 どの組方を採用するかは自由であるけれども、一般的には(1)の組方は雑誌や新聞を中心に採用されており、(2)は一般書籍で広く採用されており、最後の(3)は小説といった文藝で最も広く採用されている。これらの組方が本文中に混在させないのが、行頭における始め括弧類の組方の基本。
 
 さて、ここで漸く本題に入れる。InDesignでは文字組みアキ量が既定では14種類あるが、自動字下げする設定と自動字下げしない設定とがあり、各設定において行頭の始め括弧類がどう組まれるのかを見てみたい。また、行頭の字下げを実現する方法としては、原稿の段階でテキストデータとして全角スペース「 」が挿入される場合と、DTPソフトウェアの段階で自動字下げする場合との二つが考えられるので*1、今回はその二つの場合においても比較する。尚、比較に利用するのはInDesign CS6(Windows版)である。

 比較結果としては以下の様になって、行頭における始め括弧の組方として妥当なものは○を、妥当でないものは×とした。△については、文字組版を解説する書籍によっては是とすることもある組方である(実際にお目にかかった経験はない……)。
 適切な組方は設定数の半分にも満たない有様である。テキスト段階で全角スペースがあるのに文字組アキ量設定で自動字下げする場合と、その逆の場合とにおいては、どれも不適切な組方となってしまったが、それに当てはまらない場合でも不適切な組方が結構あることがよくわかる*2

始め括弧類の字下げ量(テキストで行頭に全角スペースを挿入しない場合)

文字組みアキ量 段落行頭 折返行頭 評価
行末約物半角 ベタ ベタ ×
行末受け約物半角・段落1字下げ(起こし全角) 全角二分 ベタ ×
行末受け約物半角・段落1字下げ(起こし食い込み) 半角 ベタ
約物全角・段落1字下げ 全角 半角
約物全角・段落1字下げ(起こし全角) 全角二分 半角
行末約物全角/半角・段落1字下げ 全角 ベタ
行末受け約物全角/半角・段落1字下げ(起こし全角) 全角二分 ベタ ×
行末受け約物全角/半角・段落1字下げ(起こし食い込み) 半角 ベタ
行末約物半角・段落1字下げ 全角 ベタ
約物全角 半角 半角 ×
行末受け約物全角/半角 ベタ ベタ ×
行末句点全角・段落1字下げ 全角 ベタ ×
行末句点全角・段落1字下げ(起こし全角) 全角二分 半角
行末句点全角 ベタ ベタ ×

始め括弧類の字下げ量(テキストで行頭に全角スペースを挿入する場合)

文字組みアキ量 段落行頭 折返行頭 評価
行末約物半角 全角 ベタ
行末受け約物半角・段落1字下げ(起こし全角) 二倍 ベタ ×
行末受け約物半角・段落1字下げ(起こし食い込み) 二倍 ベタ ×
約物全角・段落1字下げ 二倍 半角 ×
約物全角・段落1字下げ(起こし全角) 二倍 半角 ×
行末約物全角/半角・段落1字下げ 二倍 ベタ ×
行末受け約物全角/半角・段落1字下げ(起こし全角) 二倍 ベタ ×
行末受け約物全角/半角・段落1字下げ(起こし食い込み) 二倍 ベタ ×
行末約物半角・段落1字下げ 二倍 ベタ ×
約物全角 全角 半角
行末受け約物全角/半角 全角 ベタ
行末句点全角・段落1字下げ 二倍 ベタ ×
行末句点全角・段落1字下げ(起こし全角) 二倍 半角 ×
行末句点全角 全角 ベタ

 実際の組版結果については外部リンクを参照(各設定ごとの行頭における始め括弧類)。
 ※ファイルをGoogleドライブに移管。(H26-09-09追記)
 ※無料版ではPDFをはてなブログに置けないので、筆者が放置気味のウェブサイトを一時的にファイル置き場とした。

 InDesignの既定の文字組みアキ量設定は評判が悪いが、行頭の始め括弧類の組方から見ても、よろしくないことがよくわかった。やはり、利用する前に色々と調整しないといけない(この調整については後日時間があれば書きたい)。

*1:余談であるが、テキスト原稿の段階で全角スペースを挿入するやり方でも、行頭に始め括弧類が来たときは全角スペースを挿入しない人も居る。経験上、小説を書く人に多い。さらに正確に述べると、台詞を示すカギ括弧の類が行頭に来たときのみ、全角スペースを挿入しないという、えらくちぐはぐなやり方がほとんどである。

*2:先述の脚注の様に行頭の全角スペース挿入の方式が未統一状態であると、どの設定を適用しても不適切な組方になるから、編集の段階で行頭の全角スペース挿入に対する整理が必要になる。